作品(2005年〜2020年)

レッド Red 1969-1972

掲載誌:講談社『イブニング』2006年21号~2013年23号

物語の舞台は1969年~1972年の日本。ごく普通の若者達が革命運動に身を投じていく。それは、正しいことのはずだった……。
この物語の舞台は1969年から1972年にかけての日本。ベトナム戦争や公害問題など高度成長の歪みを背景に、当たり前のように学生運動に参加していった普通の若者たちが、やがて矛盾に満ちた国家体制を打倒するという革命運動に身を投じていく様と、その行き着く先をクールに描き出す、若き革命家たちの青春群像劇である。

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 1972年、日本中を震撼させたあさま山荘事件。そこに至るまでの極左運動を描いた『レッド』シリーズは、これまでのところ山本直樹の最長作品である。
 連合赤軍兵士の一人であった植垣康弘の著書『兵士たちの連合赤軍』が、事件の一般的なイメージとは異なる明るさとある種のピカレスクロマンに満ちていたことから、山本直樹はその作品化アイデアを編集者に話していたというが、当初はそのプロットの大きさから、自身で手掛けるつもりはなかったという。
 登場人物のほとんどが実在の人物、中には存命中の人間もいるため、すべて仮名に置き換えられているが、登場するエピソードはほぼすべて史実に基づくものである。登場人物の頭上に表示されている〇で囲まれた数字はこれから死ぬ順番を表し、たびたび登場人物の死亡・逮捕までの日数が示されている。連載当初は関係者への配慮から固有名詞に伏せ字が多く用いられたが、トラブルが特に生じなかったので、連載が続くにつれ少なくなっていった。
 本作は文化庁メディア芸術祭優秀賞(2010)を受賞した。

巻末付録

第2巻:〈対談〉学生運動の時代とは何だったのか 押井守×山本直樹
第3巻:『レッド前史』「なぜ彼らは〈革命〉を信じられたのか」紙谷高雪
第4巻:これがあればレッドの世界がよくわかる!レッドカード
第5巻:特別架空対談 恵那検索×山本直樹
第6巻:特別架空対談 キム×山本直樹
第7巻:特別架空対談 山本直樹×大泉ヤス


レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ 1969~1972

掲載誌:講談社『イブニング』2014年5号~2016年21号

あの連合赤軍事件をモチーフに、1969年の学生運動から、山岳ベースにおいて総括が始まりリンチによる“敗北死”が起こる1971年12月までを描いて、文化庁メディア芸術祭優秀賞も受賞した「レッド」(全8巻)。その「レッド」の続編となる、1972年2月のあさま山荘事件へ向かう当事者達最後の60日を、山本直樹が徹底した取材を基に丹念に描く衝撃作! あの時代と連合赤軍事件とはなんだったのか? 総括、敗北死、そして昭和史の大事件『あさま山荘事件』を知る為の必読書!

 前シリーズ『レッド』86話で一旦、連載を休止後、再開したのがこの『レッド 最後の60日そしてあさま山荘へ』である。あさま山荘事件後に明らかになった、「総括」という名の連続リンチ殺人、いわゆる山岳ベース事件が話の中心となる。
 前作にて革命者連合と赤色軍が合流し「赤色連盟」が結成されるが、互いの組織風土の違いや主導権をめぐる争いが顕在化、その結果として総括がエスカレートしていく。一連の事件の中で最も陰惨なエピソードが描かれる。


レッド最終章 あさま山荘の10日間 1969~1972

掲載誌:講談社『イブニング』2017年7号 – 2018年11号

革命を目指していた武装組織・赤色連盟は警察の捜査に追い込まれ、最後に残った5人は1972年2月19日、あさま山荘に押し入り、管理人を人質にとって立てこもった――。昭和の日本を震撼させ、攻防戦の模様を中継したNHKと民放を合わせた最高視聴率は89.7%を記録したという『あさま山荘事件』。連合赤軍が起こしたこの事件をモチーフに、山本直樹が緻密に描き切ったドキュメント。『レッド』シリーズ完結の一冊!

 前シリーズにて、主要キャラクターの多くが逃亡、または「総括」によって「敗北死」しており、赤色連盟の指導者である北と赤城も逮捕された。いよいよ追い詰められた残存メンバーのその後と、昭和史に残る大事件「あさま山荘事件」の顛末を描いたのが本作である。


分校の人たち

掲載誌:太田出版『マンガ・エロティクス・エフ』61号~88号、太田出版Webマガジン・ぽこぽこ(2014年10月6日~2017年9月1日)

田舎の小さな分校に通うたった2人の生徒、
ドバシ♀とヨシダ♂。
好奇心旺盛な2人のお遊びに、
転校生のコバヤシ♀が加わって…。
究極のエロティック・ストーリー、
無垢なる結末へ…!

『レッド』連載中より並行して開始した、山本直樹本来のエロをテーマとした作品。短編「分校の人」(『夏の思い出』収録)との関連はない。当初は『マンガ・エロティクス・エフ』にて連載されていたが、雑誌の休刊に従いウェブでの連載に移行した。なお、第2巻が東京都により「不健全な図書類」に指定された影響からか、第3巻はアマゾンでの取り扱いがなかった。


田舎

掲載:Ohta Web Comic(2018年5月15日~2020年4月15日)

『レッド』完結から2年、山本直樹の辿り着いた、結論にして新境地。
待望の完全新作!

暑い東京から逃れ、田舎の親戚の家に受験勉強のため逗留している男の子(フーちゃん)と、その家に住んでる女の子(キーちゃん)との間で繰り広げられる、親には内緒のウルトラピュア・エロティック・ストーリー!

『レッド』完結後初の新作。作者自身が「ただのエロ漫画」と述べた通り、ストイックなまでにエロを描いている。久々のエロ路線新作ということで、多くのサイトで売行きランキング1位を占めたが、東京都の「不健全な図書類」に指定されたため、発売後数週間でアマゾンの取り扱いが取りやめとなっている。ただし、その後も重版している。宝島社『このマンガがすごい!2021』にてオトコ編13位にランキングされた。