ビリーバーズ
掲載誌:小学館『ビックコミックスピリッツ』1999年~
そこは孤島。女ひとりに男がふたり。波光きらめく楽天地。しかし、時は満ち、やがて世界は分裂す。山本直樹的世紀末人間輪舞の最高傑作!
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1995年に起きた地下鉄サリン事件の影響が見える(山本曰く「カナリアは思いつかなかった、カナリアは」)。孤島で修行に励む宗教団体の教徒たちの物語。静謐な話の始まりから、徐々に「俗」「性」が抑えられない人間の性として立ち上がり、宗教団体の欺瞞が明らかになっていく。「議長」が語る夢のエピソードや、のちの『レッド』の元となった連合赤軍事件の坂口弘に由来するラストなど、山本直樹の創作を構成する様々な要素が詰め込まれている。なお、物語の舞台は、東京第二海堡をモデルとしおり、山本は第二海堡で『マンガ・エロティクス・エフ』企画の写真撮影を行ったこともある。
2012年に復刊ドットコムより新装版が刊行されている。
安住の地
掲載誌:小学館『スピリッツ増刊IKKI』第1号(2000年12月30日号)~第12号(2002年11月1日号)
言葉も分からない異国の地で、空襲で孤児となった少女。想像を絶する凌辱の日々を乗り越え、無事“安住の地”に辿り着く日は来るのか…。 動き出した劣情のファンタジー!
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前作『ビリーバーズ』でたびたび言葉に上がった「安住の地」をタイトルとしており、『ビリーバーズ』の「議長」(本作ではリアルマン)が登場するが、ストーリーとしては連続していない。トレーシングペーパーを使った凝った装幀となっており、『IKKI』の丁寧な本づくりが伺われる。2021年現在、アマゾンKindleでの電子書籍配信はされていないが、他サイトでの取り扱いはある。
堀田
掲載誌:太田出版『マンガ・エロティクス・エフ』2002年Vol. 15~Vol. 60
エロティックかつ摩訶不思議な平行世界で繰り広げられる隠微で鬼畜な所業の数々・・・。読むほどに意識の迷路に引きずり込まれる山本直樹の新境地、第一弾!! 傑作短編3本も特別収録!(1巻紹介文)
「ホントにここは夢の中なんすか?」フラッシュバックのように突如現れる謎の「神殿」、ゴミに埋もれる女、〆切に追われるマンガ家、漁師小屋で秘め事に耽る少年少女…次々に視点や場所を変えて青年「堀田」の真実に近づいてゆく!夢か現実か、はたまた過去か現在かそれすらもわからない<日常>という迷宮に果たして出口はあるのか!?(2巻紹介文)
あたしと堀田は、ついにエスイーエックスをばしてしまった。
鬼才・山本直樹が贈るエロティック・ファンタジー
更なる謎を呼ぶ第3巻、大幅加筆の上ついに刊行!
◆商品化された性が青少年に与える多大な影響―
高校生の堀田と友子は、漁師小屋で初めてのセックスをした。
一方、マンガ家の堀田は、謎の神殿世界でアイドルと戯れ、堀田兄と筒子は、奇妙な家で怠惰な昼下がりを過ごす。
いくつもの不可思議な世界が錯綜し、物語は更なる迷宮へ……。(3巻紹介文)
あたし、どうなっちゃうんだろう?
高校生の堀田と友子は、漁師小屋で初めてのセックスをした。
一方、マンガ家の堀田は謎の神殿世界でアイドルと戯れ、堀田兄と筒子は奇妙な家で怠惰な昼下がりを過ごす。
不可思議な世界が錯綜する中、物語は堂々の完結!
短編『だるい人』『その仲間』、自らの幼年時代を振り返る『北の秘密基地』他全5編も収録。(4巻紹介文)
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第1巻の刊行が2003年、第4巻が2010年と、これまでの山本にしては緩やかな刊行ペースで発表された。主人公の一人、堀田春男の命名は、ハリーポッター由来(作者から直に聞いた)。第3巻が東京都から有害図書指定を受けたため、この巻のみ電子書籍でもアマゾンの取り扱いがない。短編「北の秘密基地」のみビックコミック・スペリオール初出。
1巻収録短編:
「普通の日曜日」「昏睡」「給水塔」
2巻収録短編:
「仕事」
4巻収録短編:
「その仲間」「洗脳日和」「だるい人」「だるい人のつづき」「北の秘密基地」
破戒 〜ユリ・ゲラーさん、あなたの顔はいいかげん忘れてしまいました〜
掲載誌:小学館『月刊IKKI』2004年6月号~2004年12月号
「恋っていうんですか? そういう境地」
経営難の小さな印刷会社を営む若き2代目社長カズシは、
工員のノボルが機械で指を切断して以来、数奇な運命に呑まれていく。
少年時代の封印された記憶がフラッシュバックするなか、
謎多き魔性の女・ミツコと出会い……。
様々な伏線がダイナミックに収斂していく松尾スズキのストーリーと、
繊細かつ妖艶な山本直樹の筆致が融合するコラボレーション。
傑作コミック、待望の新装・新編集版。
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山本直樹が愛好する劇団「大人計画」の主宰・松尾スズキが原作を担当した、二人初のコラボレーション作品。2005年4月1日に小学館より初版が刊行、加筆修正で連載時より24ページ増となっている(あとがきより)。原作はもともと松尾が映画用に書き下ろし、そのままお蔵入りとなっていたもの。サブタイトルは遠藤ミチロウ「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました」から、また各話の題名はすべてシェイクスピアからの引用である。2016年にイースト・プレスより新装・新編集版が刊行された。経緯などは下記リンクに詳しい。
マトグロッソ[イーストプレス]:『破戒』合作の舞台裏、またはエロについて。